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「ああ、それともう一つ。転校生にも月次戦に出てもらう。だから、それまでになるべく強くしてくれ、って注文が来てる」
「・・・えっ!」
朔也は驚いた。少し考えて、晃一にその言葉の真意を問う。
「一週間基礎魔術を教えただけで、月次戦に出すんですか? 何で?」
「さあな、俺もよく知らん。学園長代理の考えかもしれないし、何か別の理由があるのかもしれない」
晃一の言葉を聞いて、朔也はますます首をかしげる。
月次戦は参加自由の魔術を用いた個人模擬戦である。学園内のランキングを決めるランキング戦に影響があるし、魔術師の等級を決めるのに関係があるためほとんどの生徒が参加しているが、参加したくない生徒はしなくてもいい。そのため、転校生は当然参加しないものだと朔也は思っていた。
「転校生が望んで出るんじゃないですよね。言い方からして学園側が参加させようとしている」
何年間も魔術の勉強をしてきた生徒に、一週間魔術を学んだだけの転校生が勝てるわけがない。それなのに、学園はわざわざ転校生を月次戦に出そうとしている。朔也はそこに大袈裟に言えば陰謀めいたものを感じて眉をひそめた。
「まあ、あまり深く考えないほうがいいかもな。あの人は時々愉快犯みたいなところがあるし」
「・・・そうですね」
朔也は納得がいったわけではないけれど、とりあえず晃一の言葉に賛成した。学園長代理の考えていることが分からないのは、いつものことだ。
「まあ、何かあっても俺がなんとかしますよ」
そう言って朔也はにっこり笑う。そんな朔也を見て、晃一はため息をついた。
「お前なあ・・・。また一人でどうにかするつもりだろ。いまは昔と違って郁海や山倉がいるんだから、ちゃんと頼れよ」
朔也は何も答えず、肩をすくめてちょっと笑ってみせた。それは朔也が言いたくないことがある時にする癖だ。もちろん晃一はそのことに気付いていたが、指摘することはできなかった。
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