一章

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「ああ。・・・・・・そういえばお前、氷室以外の友達いないもんな。郁海と山倉以外の生徒とはほとんど話さないし。それじゃあ噂流してるやつを見つけるのは難しいよな」 晃一に図星を言われて、朔也はぶすっとした顔になる。 そう、朔也には世間話をする友人すら晃一が名前をあげた三人以外にはいないのだ。それを言われるのが、朔也は嫌だった。 「だから、周りを頼れって。あの二人なら喜んでお前に協力するだろ?」 「嫌です。迷惑かけたくないんで。1人で何とかできます」 「だから、それができないんだろ。あいつらは頼られて迷惑だと感じないと思うけどな」 晃一にいくら言われても、朔也は頑なに首を横に振った。晃一は仕方なさそうに笑って、そんな朔也の頭を乱暴になでる。 「まあ、いい機会だ。別に生徒全員に嫌われないといけない訳じゃないんだろ。誤解を解くついでに、ちゃんと信頼できる相手、友達とかつくれよ」 「嫌です。面倒くさい」 朔也はすぐに断ったけれど、そんなことでは晃一は諦めない。にこにこと笑いながらも、朔也の頭に乗せた手で上から圧力を加える。 「あーさーぎーりー」 このままではしつこく言われそうなので、朔也はしぶしぶ頷いた。 「はいはい、分かりましたよ」 なんだかんだで晃一には小さい頃からお世話になっている朔也なのだ。晃一が自分を心配して言ってくれていることが分かっているからこそ、晃一の言葉を強くはねのけることができなかった。
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