一章

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「里中先生、そろそろいいですか」 「ええ、お待たせしてすいません」 晃一と朔也の会話が終わるのを待っていたらしい。晃一の了承を聞いてから、先生は生徒たちに案内されて職員室から出て行った。 「それじゃあ転校生の件よろしくな」 朔也に声をかけてから、晃一は慌てて先生のあとを追った。 (朝霧の友達か・・・。まあ、あの郁海と山倉が許すかどうかは別問題だけどな) 独占欲の強い例の後輩二人のことを思い出して、教室を出て行くときに晃一が苦笑しながらそんなことを考えていたことなど、朔也が気付くわけもなかった。 職員室に残されてしまった朔也は生徒たちが完全にいなくなったことをちゃんと確認してから、職員室から出て行った。職員室の外では優奈と晴樹が朔也が出てくるのを待っていた。案の定言い合いをしていた二人だが、朔也が出てきたのを見るとすぐに言い合いをやめて朔也のそばに駆け寄った。 「先輩、里中先生の用って何だったんですか?」 「朔也何か嫌なことでも言われた?」 二人の姿を見て、朔也は楽しそうに笑う。 「大丈夫、大丈夫。戻りながらちゃんと説明するから」 朔也は自分を心配してくれる後輩二人の思いやりにくすぐったさを覚えた。
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