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「もう、どうすりゃいいんだよ・・・」
「何が?」
突然聞こえてきた声に、日向はびっくりして顔をあげた。
いつの間に居たのだろうか?
日向の目の前には、黒い制服を着た一人の男子生徒が立っていた。その男子生徒は日向を見ながら首をかしげている。
青年、いや、少年と青年の間くらいだろうか。身長は日向と同じくらいだ。けれど、普段から鍛えている日向からすれば、相手の体は細く、自分より少し小柄のように感じた。さらさらと風になびく髪はその青年の目元まで隠している。襟足をくすぐるそれは自分と同じ黒髪とは思えないほどつやつやとしていた。
目立つような外見ではないけれど、何故か近寄りがたい雰囲気をまとっている人だ。その理由はすぐに分かった。
(目が、黒い)
風で前髪が押し上げられた瞬間に見えたその人の瞳は吸い込まれそうなほど、綺麗な黒だった。瞳の色が黒い人がいることを日向は知識としてだけ知っていた。だから実際に見たのはこれが初めてである。それくらい黒い瞳というのは珍しい。
そんな珍しい存在が目の前にいるせいで、日向は今の状況が頭の中から吹き飛んでしまい、ただその彼を見ているだけしかできなかった。
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