一章

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そんな日向の様子を見て、相手は何ごとかを納得した顔になる。 「・・・それじゃあ」 そして、それだけ言って、その場を去ろうとした。 「ちょ、ちょっと待ってくれ!」 日向は慌てて相手を引き留める。やっと人に会えたというのに、どこかに行かれたらたまったものじゃない。けれど、そんな日向の行動を意外に感じたらしい。その人は不思議そうな顔をして尋ねた。 「あれ? 俺に話しかけられるのが嫌じゃないの?」 「はあ? 何でそうなるんだ?」 「えっ、違うの!?」 日向は相手が言っている意味が分からなかった。けれど、相手はその答えがよほど予想外だったらしい。日向の答えを聞いて、かなり驚いたらしい声をあげた。 彼は日向のことを注意深く見る。その視線が日向が手にもっているパンフレットに留まり、やっと全てが分かったらしい。 「ああ、もしかして転校生?」 その言葉に日向は頷く。 「じゃあ、もしかしなくても道に迷ってた?」 「まあ、そうです」 日向は気まずそうに答えた。学園の敷地内で道に迷ったということを、学園の生徒に伝えるのは恥ずかしいことのように感じたからだ。しかし、相手は特に何も言わなかった。それどころか、うんうんと頷いている。 「まあ、外向けのそれを見ながらじゃ、迷うのも仕方ないよね」 それというのは、日向が持っているパンフレットを指しているいるらしい。
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