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言われている意味が分からず日向が首をひねると、彼は理由を説明してくれた。
「そのパンフレットの地図ってデタラメだから」
「はあ? 何でそんな地図載せてるんですか!」
相手は敬語じゃなくていいよと言ってから、どう説明したものか困ったように笑った。
「何ていうか、防犯?みたいなものだよ」
日向はそんな答えでは納得できなかったけれど、それ以上にデタラメな地図に騙されたことにがっくりと肩を落とした。そんな日向を見かねたのか、彼が声をかけてくれた。
「まあ、知らないならしょうがないかな。普通ならだいたい気付くんだけどね。地図の配置と違うって」
随分さまよい続けた日向にとっては、その言葉は追い打ちになったらしい。日向はさらに肩を落としてしまった。
「よかったら俺が案内してあげようか?」
日向の姿があんまりにもかわいそうだったのか、彼はそう提案する。
「本当か!」
日向は目を輝かせる。まさに願ってもない提案だ。
「うん、いいよ。どこに行きたいの?」
「管理棟の、学園長室に行くつもりだったんだ」
「分かった。じゃあついて来て」
そう言って彼はさっさと歩きだしてしまう。慌ててついて行こうとした日向は、重要なことを聞いていなかったことに気付いた。
「そういえば、名前なんて言うんだ?」
彼も自分が名乗っていなかったことにいま気付いたらしい。改めて向かい合うと、軽く笑って自己紹介をした。
「俺の名前は朝霧朔也。よろしく」
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