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「ねえねえ、そう言えばこれは知ってる?」
先程までの声の大きさが嘘のように、二人の女子生徒はひそひそと話してくすくすと笑い出した。それを見て朔也は苦い顔をする。
(うーん。これは何とかして噂を止めさせないと)
そんな感じでふやふやっと心の中で決意した朔也だったが、そもそもきちんと他人と交流ができるなら彼はここまで嫌われてはいない。
朔也に対して好意的な態度で接してくる人間など片手で数えられるくらいしかいない。それだけでも絶望的だが、それに加えて彼はあまり人とは積極的に接してこなかった。
これでは前途多難である。
そのことを今になって朔也は少し悔やんでいた。
今目の前に女子生徒なら力任せに無理矢理噂をやめさせることは出来るかもしれない。しかしそれではかえって朔也の良くない噂が一つ追加されるだけだろう。それでは無駄なのだ。
(何かきっかけがあればなあ。何か・・・)
それでも自分が嫌われ者だと分かっている朔也のこと。
何かのきっかけを待つだけで、積極的に動こうとはしていなかった。
普通なら待ってばかりでは何も変わらない。
本当なら自分から行動しなければ何も起こらない。
しかし、奇跡的にもそのきっかけはやってくる。
そして朔也の願いは思わぬ形で実現されるのだった。
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