夏祭り

6/6
5人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
 そんな様子がおかしくて、私は思わず笑ってしまった。 「ひでーヤツ。俺、真剣やったのに……」  さらに落ち込む水嶋を見て苦笑いすると、私はその背中をポンっと叩いた。 「でも、気持ちは伝わった」 「ほんとか?」 「うん」  私は微笑んでみせる。と、水嶋はおもむろに立ち上がり「やったあー!」と大声で叫ぶ。 「ちょっ! 何してるんやって!」  私は慌ててたしなめる。 「どうせ、誰も聞いてないし」  水嶋はそう言って、ニッと笑った。 「バカ」  私が顔を背けると、スッと私の右手を取る。  私が不思議そうに見ていると、甚平のポケットから何か取り出し、ブンブン振り回す。と、それが淡い蛍光ブルーに光り出した。 「あっ」 (いつの間に……)  それは出店に売っていた、光るブレスレットだった。 「残念ながら、今はこれしか無いでな」  そう言って、私の腕に巻き付ける。 「ありがと」  私がお礼を言うと、水嶋はまたニッと笑う。 「俺、待ってるで。出来たら早い方がうれしいけど」 「うん」 「まあ、まずは遠恋からやな」 「浮気せんといてや」 「アホ! 7年も待ってたんやぞ。するか」 「フフフ……」  私達はじゃれあいながら田んぼ道を歩く。  私達が通りすぎたあと、何処から飛んできたのか、ホタルが2匹飛び交っていた。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!