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そんな様子がおかしくて、私は思わず笑ってしまった。
「ひでーヤツ。俺、真剣やったのに……」
さらに落ち込む水嶋を見て苦笑いすると、私はその背中をポンっと叩いた。
「でも、気持ちは伝わった」
「ほんとか?」
「うん」
私は微笑んでみせる。と、水嶋はおもむろに立ち上がり「やったあー!」と大声で叫ぶ。
「ちょっ! 何してるんやって!」
私は慌ててたしなめる。
「どうせ、誰も聞いてないし」
水嶋はそう言って、ニッと笑った。
「バカ」
私が顔を背けると、スッと私の右手を取る。
私が不思議そうに見ていると、甚平のポケットから何か取り出し、ブンブン振り回す。と、それが淡い蛍光ブルーに光り出した。
「あっ」
(いつの間に……)
それは出店に売っていた、光るブレスレットだった。
「残念ながら、今はこれしか無いでな」
そう言って、私の腕に巻き付ける。
「ありがと」
私がお礼を言うと、水嶋はまたニッと笑う。
「俺、待ってるで。出来たら早い方がうれしいけど」
「うん」
「まあ、まずは遠恋からやな」
「浮気せんといてや」
「アホ! 7年も待ってたんやぞ。するか」
「フフフ……」
私達はじゃれあいながら田んぼ道を歩く。
私達が通りすぎたあと、何処から飛んできたのか、ホタルが2匹飛び交っていた。
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