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今度はほぼ十割ケイさんの魔力を使いつつ、ウィル君の魔法訓練が再開されました。
ケイさんという砲台から、ウィル君という射手が攻撃を放つ感覚でしょうか。
一発の威力としては影を二百ほど葬る程度で、それを矢継ぎ早に連射していきます。
もういっそ、「幸いにして」という表現が相応しいのか。
影の戦力は潤沢なので、的には事欠きません。
十発も放てばウィル君も随分手馴れた様子になり、射程を犠牲にしつつも幅を広げるという調整までし始めました。
雪の白と影の黒との割合が半々程度になった頃、ケイさんが休憩を提案します。
「ひとまず休憩して、その後ウィルだけで一度雷魔法を放ってみるか。慣らしとしてはもう十分なはずだ」
けろっとした顔でケイさんは言いますが、普通の見習い魔法使いが丸々三ヶ月ほど掛けて消費するくらいの魔力を使っていました。
それ自体はあくまでケイさんの魔力提供と術式構築があっての事ですが、既にウィル君は見習い魔法使いを鼻で笑える正確さで雷魔法を放つ事が出来るかと思います。
彼はまだ、魔法を習い始めて一時間弱なんですが。
「では、今度はイレーネちゃんの番ですね。……私がちょっと戦いに行って、軽傷でも貰って来ましょうか?」
負傷者が居ないと回復魔法の練習が出来ないのは、非常に不便ですね。
私の場合はケイさんがしょっちゅう負傷していたので、その機会には恵まれていたんですが。
流石に、ウィル君に怪我を負わせる様な戦い方を強いる訳にもいきません。
いくら幼い頃のケイさんを髣髴とさせるからといって、同じ事が出来ると思うのはあまりにも酷です。
「いや、俺が出る。魔力無し、武器無しでやれば、せめてかすり傷くらいは負うだろ」
それ、普通は死にますって。
相手は影の大軍ですよ。
なのに全く危ない様に聞こえないのは事実ですが。
「地形が変わってしまわない様に、気を付けてくださいね」
大地を素手で殴ってクレーターとか作る人ですから、このくらいの言葉しか出せません。
「行ってくる」
至って軽い調子で障壁の外へ出たケイさんに、私はひらひらと手を振りました。
「行ってらっしゃい、ケイさん」
そして次の瞬間から、影が次々に爆ぜ始めました。
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