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「さっきの一撃は、俺の魔力も込めたんだがな。とはいえ、最初から術式の発動にまで持っていけたのは驚いたぞ」
ケイさんがウィル君の頭を優しく撫でています。
見た感じ、八割がケイさんの魔力で構成された魔法でした。
後はウィル君が魔力をケイさんの言った通り「思い切りぶちかませ」ば、雷魔法が構築されて発動する状態になっていて。
「これは、私が想像していた以上に将来有望な様だね」
ウィズダムでの素振りを止めたリリアーヌが、興味深そうにウィル君を見ています。
「俺が本気でウィルを鍛えたら、恐らく今のお前は越えるだろうからな」
さらっととんでもない事を言われました。
私、これでもリリアーヌの実力は認めているんです。
ケイさんの近くで見ると霞んで見えますが、そんなのは当たり前ですし。
ケイさんからの発言を受けて、リリアーヌは強い視線をウィル君に向けました。
「これは私も、うかうかしていられないかな」
とっても楽しそうに、紅い目を煌かせていました。
しかし、そのリリアーヌの前に小さな影が割り込んできます。
「だめ! ウィルはわたしの!」
イレーネちゃんでした。
リリアーヌの視界からウィルを隠す様に立っています。
独占欲が強そうですね。
「……フフッ。では君もウィリアムに負けないよう、彼の隣に立つ資格を得るために努力する事だ。『自分がこうしたい』と言うだけでは、いずれ大事なモノを無くしてしまうからね」
リリアーヌがイレーネちゃんの頭を撫でますが、撫でられているイレーネちゃんは嫌そうに顔を歪めています。
振り払わないだけマシでしょうか。
「では、回復魔法の訓練をしないといけませんね。ですが誰かの傷が無い事には───」
私が言いかけた矢先に、ケイさんがウィル君の右手を掴んでこちらに向けました。
良く見ると、人差し指がほんの少し焦げています。
先程の一撃で、わざと制御を甘くした部分があったのでしょうか。
あったのでしょうね。
「けがしてる!?」
一拍ほど不思議そうにしていたイレーネちゃんでしたが、すぐにその怪我を見つけて慌ててウィル君の傍に駆け寄りました。
「フィーおねーちゃん! はやく、なおしてあげないと!」
どう見ても軽傷ですが、イレーネちゃんは本気で心配している様子です。
これなら、回復魔法の習得も早そうですね。
……かつての私を思い出します。
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