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「フィーナは本当にケイ様の事が好きみたいだね」
私の顔を覗き込みながら、リリアーヌが茶化すように言ってきます。
「何ですかリリアーヌ。ケイさんは私の勇者様です。あげませんよ!」
もしかするとリリアーヌはケイさんの事を狙っているのでしょうか。
断固阻止します。
「フィー、お前のじゃないって俺は何度も言ってんだろうが」
そしてケイさんにそこまで言われるのが形式美。
そんな形式美はいつか完膚なきまでにぶち壊したいと私は考えています。
「そんな事はどうでも良いじゃないですか。問題なのは気持ちですよ、気持ち……いえ、おふざけはここまでにしておきます。睨まないでください。眼力が尋常じゃないんですってば!」
ケイさんからの視線が殺人的なものに変貌していっていたので、私は戦略的撤退を選びました。
だって本気で怖いんですって!
邪神や魔神から放たれていた威圧感なんて、ケイさんの眼力の前には塵芥ですよ!
さっきはケイさんも、溜息という要らない前置きこそありましたが、頭を撫でてくれたんですけどねー……。
「まあ、今はウィルの魔法訓練だな」
ケイさんはそう言って、再びウィル君の方へ向き直りました。
「良いか、ウィル。さっきお前が放った一撃は、実は今のお前の魔力だけでも放てた雷魔法だ。威力を考えれば分かると思うが、下手に使えば味方まで巻き込んで殺してしまいかねない。自分では知らなかっただけで、お前は元からそれだけの、本当に危険な力を持っている」
ウィル君の両肩をしっかり掴み、正面から視線を合わせて、ケイさんは言葉を続けます。
「だからまずは、その事をしっかり分かっておかなきゃならない。その上で、次からは威力を抑えていく。最初の内は俺が手伝うから、お前は魔法を放つ時の感覚を良く覚えろ。自分一人でも、俺が手伝った時と同じ事をやれる様にする為に」
所謂トレースというものですね。
お手本の上に紙を置いて、透ける文字を上からなぞる様に。
変な癖が付いていない今、ケイさんが最適化した術式を覚えこんで貰う訳です。
「うん。僕、がんばるよ!」
先程からやる気に陰りを見せないウィル君です。
魔族には好戦的な者が多いと言いますが、彼もそうなんでしょうかね?
とはいえ、それだけでは説明出来そうも無い心の強さを感じさせてくれますが。
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