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格闘主体で戦うケイさんを見るのは久々です。
握られた拳は、影の身体に欠損を作り。
広げられた掌(てのひら)は、影の身体を破裂させ。
敵と状況に応じて拳打と掌底を使い分ける戦い方は、実戦の中でケイさんが確立した一種のマーシャルアーツです。
普通ならばここに蹴撃も入るのでしょうが、そもそも蹴撃というのは腕よりも力が強い足によって攻撃を繰り出したいからこその選択肢です。
それが邪神すら殺せるケイさんの腕力なら、体勢を崩す危険性を孕む蹴撃はむしろ可能な限り封印した方が良いと言えるでしょう。
実際、ケイさんはほぼ蹴撃を使いません。
まあ、それでもリーチの長さという利点ならありますが、それであれば剣を使った方がもっとリーチが長くなります。
結局のところ、一度目の勇者時ならばともかく今のケイさんにとっては、マーシャルアーツは手加減の為の手段でしかない訳ですね。
もし敵がケイさんの膨大な魔力を全て消費させ、ありとあらゆる武器を使えない状況に追い込めたなら、もっと意味は出てきますが……最初の条件からいきなり無理です。
ケイさんの単位時間当たりの魔力回復量が尋常じゃありませんし、更には魔力変換効率が高すぎます。
一流と称される魔法使いが放つ攻撃の魔力消費を仮に十として、ケイさんはそれを魔力消費七くらいで相殺しますから。
驚愕の三割減です。
そして相殺している間に回復する魔力量は、ほとんどの場合において消費を上回りますし。
そうならなかった場面は、二度目の勇者として戦った対魔神戦くらいでした。
その対魔神戦ですら、先に魔力が尽きたのは魔神の方だったんですが。
もっともそれには、「第一」の聖剣による初撃が響いている事を否定出来ませんが……それは今置いておきましょう。
つまり、本来なら有効な「一騎当千の強者を飽和攻撃によって疲弊させ仕留める」という手段が、最低の下策に成り下がってしまう訳です。
私、これはどう考えてもおかしいと思うんです。
だってこれ、本当はとても有効な策なんですよ?
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