パーミッション

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 黒々とした影が蠢く大地を、金色に輝く雷が縦横無尽に駆け巡ります。  比喩表現ですが、欠片ほどの誇張も含まれてはいません。  ウィル君は今、一筋の雷そのものです。  雷魔法により強化された、ウィル君の神経を駆け巡る電気信号。  それにより極限まで引き出される身体能力は、最早子どものソレではありません。  酷使された筋組織は幾度と無く傷付き、その度にイレーネちゃんの回復魔法により再生されて。  より強靭に、更に強靭に、なお強靭になり。  遂には「一度目の勇者召喚直後のケイさん」と、ほぼ同等の身体能力を得るに至りました。  正確にはやや劣る程度ではありますが、比較対象として何ら不足していないという事実は、私に驚愕以外の感情を許しません。  力の制御はまだまだ甘く、格闘技術も荒削りで。  とてもではありませんがケイさんの様に相手の攻撃を受け流し、掌底により敵を内部破壊する事など出来ません。  魔力不使用のケイさんが相手をしても、片腕だけであしらわれてしまいました。  ですがそれでも、有象無象の影が数千体現れた程度では、何の脅威にもなりません。  ウィル君は雷を纏う拳で、影を打ち抜きました。  直撃を受けた影は当然消滅し、余波の雷を受けたその他多数の影を纏めて葬ります。  ……おかしいですね。  ケイさんと同じ事が出来ると思うのは、酷だと思っていたんですが。  ウィル君は今、三つの世界全ての存在の中で最も上手くケイさんの真似が出来るでしょう。  それが一つの戦い方だけに限定される事柄であるにしろ、やはり驚愕以外の何物でもありません。  ものの数分で半数以下にまで数を減らした影は、頃合と見たケイさんとリリアーヌにより残党狩りを受けています。  ええ、ウィル君が単独で半数以下にまで減らしました。  数にして千体以上を屠りました。  既に警戒の必要性が皆無となった戦場から目を離し、再びウィル君のご両親に向き直ります。  二人は目をまん丸にして、絶句していました。  無理もありません。  はい、欠片も。 「ウィル君が全力で戦闘可能な連続時間は、現段階で五分程です。つまりまだある程度は戦い続けられますが、大事を取って下がっていて貰いましょう」  私はウィル君に念話を飛ばし、こちらに来るよう伝えました。
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