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「予想以上の逸材でしたね」
ウィル君とイレーネちゃんの村を危機から救い、二人とその親とも別れを告げてから。
私達はトリヴァースのアライアンス城へと戻ってきました。
今は談話室で、マリーが出してくれた紅茶とお茶請けを楽しんでいます。
「持続火力は心許ないけどな。まあ、それは将来に期待するか」
問題点の指摘について容赦しないはずのケイさんの口から、持続火力しか出てきませんでした。
しかもそれすら「将来に期待」と、非常に前向きな言葉が付随して。
「……本当に、予想以上の逸材でした」
「何故わざわざ二度言った」
ケイさんから鋭くつっこまれましたが、スルーしておきましょう。
「五年後くらいには、何かしら二つ名を得ているかも知れませんね」
例えば、「雷霆のウィリアム」とかそんな具合に。
「ああ……、まず名前が『ウィリアム』で、雷だからな」
ケイさんが良く分からない事を言いました。
そういえば、ウィル君の名前を聞いた時のケイさんは意味深な笑みを浮かべていましたか。
「モノヴァースで『電気と磁気の父』と呼ばれる偉人の名前なんだよ。……それと同時に、モノヴァースで初めて電気椅子による処刑を受けた人物の名前でもあるけどな」
何て因果な名前なんでしょうか。
後者の方は、自分の神経に雷魔法を通したウィル君と若干重なる部分がありますし。
もっともウィル君の場合はそれに適応していますが。
「名は体を成すと言うけれど、彼の場合は本当にそうだったのかもしれないね」
リリアーヌが紅茶を飲みながら、楽しそうに言いました。
「ウィルが武器として斧を選んでいたら、俺は更に驚かされただろうな」
ケイさんがまた良く分からない事を言いましたが、詳しい話を訊く気がおきません。
多分これは、知らない方が精神衛生上宜しい話です。
「そういえばケイさん。別れ際、ウィル君に何か渡してましたけど」
手のひらサイズの何かだったようですが。
「磁力を操る魔法具をな。大出力の雷魔法が撃てない魔力残量になった時、対空手段が無いと困るだろ?」
さらっと言われましたが、それってつまり。
「磁力で飛べるんですか」
ケイさんですら、一度目の勇者時はまともな対空手段を持っていなかったんですが。
「便利だろ?」
いえ確かに便利ですけど。
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