パーミッション

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 それからひと月の間、私達はトリヴァースとジヴァースを行ったり来たりしながら影を殲滅していきました。  特に重点を置いたのは、トリヴァースの北アメリカ大陸、南アメリカ大陸、オーストラリア大陸の三つです。  影の発生地点と思われる南極大陸はひとまず捨て置いて、その他の大陸奪還に向けて行動を開始した訳ですね。  結論を先に言えば、上記三大陸からは概ね影の勢力を排除出来ました。  ただし人類の生き残りは、極めて少数でした。  ……いえ、きっと大勢生きてはいるのでしょう。  その姿を、黒く染め上げられた上で。  果たして人として生きているのかどうかは疑わしいところです。  影を生物の定義に入れて良いのかすら、私達には分からないのですが。  それを考えれば、やはり生物としてですら生きているのか疑わしい事になりますね。  先程、私は「概ね影の勢力を排除出来ました」と言いました。  具体的には魔物の姿の影が主な対象で、「ヒトの姿の影」はほとんど含まれませんでした。  まあ、人類の多くは民間人ですから、成体になれば最低限の戦闘能力を有する魔物と比べて平均レベルが落ちてしまう訳ですし。  あえて戦闘要員として駆り出す必要が無かったのかも知れません。  ただそれにしても、「戦える人間」であればその辺の魔物よりずっと強いのも確かです。  全体の平均を出せば非常に弱いのが人間ですが、上位のみを抽出すればこれほど戦闘に秀でた生物も珍しいでしょう。  それなのに、相手は戦力として「ヒトの姿の影」をほとんど出しませんでした。  彼らは一体、今何処に居るのでしょうか。  この事はケイさんにも話してみましたが、流石に情報が足りないようで。  「嫌な想像は幾らでも膨らむな」と、先の話の一切を聞きたくない言葉を頂きました。  私はそこで話を打ち切りました。
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