パーミッション

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 アライアンス国内での話もしておきましょう。  私達が各大陸で救助しアライアンスに連れてきた人々の多くは憔悴し切っており、ただ黒い物を見るだけでも身体の震えが止まらなくなる、という方すら居ました。  治療にはアライアンスでも有数の精神魔法使い達が動員され、その中にはケイさんの姿も。  また、中には影に対する敵愾心を露わにして、奴らを根絶やしにしてやるんだと意気込む方々も居て。  そんな方々については、臨時の軍としてアライアンスの戦力に組み込ませて頂きました。  ただし勿論、一定以上の実力を持つ場合に限っての話です。  意気込みだけで倒せる相手ではありません。  彼らの住む場所に関しては、ケイさんが擬似聖域を拡張し開発可能な土地を増やす事で対処していました。  土木作業も、永続的に効果がある空間魔法を構築して基礎工事を不要にしてしまって。  建材の確保も、影討伐の片手間に集めていたものがあって。  異常なまでに低コストでありながら、相当に立派な住居が幾つも建てられました。  そして、ジヴァースで見付けたウィル君を鍛えた事がその後押しをしたのか、ケイさんが直々に彼らを鍛えるなんて事になったりして。  流石にウィル君程の才能に恵まれた人材は居ませんでしたが、元々影に襲われて絶望を味わってなお心を折られなかった集団です。  終了までに七割程の脱落者を出しつつ、三ヶ月間ケイさんの扱(しご)きに耐えた約三百名の軍隊を立ち上げました。  圧倒的強者に対しても戦意を衰えさせない、トリヴァース中を探しても他に類を見ない精強な軍隊です。  人数的な規模こそ中隊クラスですが、その戦力は師団クラス───最低でも一万人規模の軍隊と同等でしょう。  少人数であるが故の機動力も加味すれば、活躍の幅はとんでもない事になりそうです。  そんな精鋭を短期間で育て上げた訳ですが、勿論最初から良い出だしだった訳ではありません。  何せ自分達の国が壊滅状態に追い込まれた後、最早手遅れの状態になってから来た勇者ですから、罵声を浴びせる人間が一定数存在したんです。  そこは本来召喚師である私の責任なんですけど、彼らにとっては感情の捌け口が欲しかっただけらしいですね。  言い訳をさせて貰うなら、そもそも私だって目覚めた直後に勇者召喚をしても手遅れだった訳で、敵が一枚上手だったという話なんですけど。
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