パーミッション

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「ウィズダムと同時に具象化出来たらな……」  珍しく無い物ねだりですか。  勇者と同じく、聖剣は一つの世界にとって唯一の存在ですからね。  いくら役目を終えた祝福に由来する聖剣とは言え、それらが同時に存在する事を許容するほど世界は懐が深くありませんでした。  祝福の規模については世界も寛容なんですけどねぇ。  ケイさんを見れば、一目瞭然ですが。  だからこそ、そろそろ「今回の」祝福について本腰を入れて調べるべきでしょうか?  状況に進展も無い訳ですし。 「そういえばケイさん。今回の祝福については何か分かりましたか?」  ひとまずご本人に直接質問してみましょう。  案外さくっと解決するかも知れません。 「ああ、それか。消去法で見付けようとするのは無謀かもしれない、というのは分かった」  ケイさんに出来る事を勘案して、それでも消去法が無謀になるとは。  何ですかその状況。  世界は一体何を祝福として与えたんですか。  万が一私がケイさん以外の勇者を召喚していたら、その時点で詰んでたんじゃないでしょうか。  だって戦闘に使える祝福ではないようですし。 「……本当に、ケイさんを召喚した私良くやりました。一切の妥協を許さずケイさんだけを狙って召喚した私、とても良くやりました」  そこはかとなく暗い気持ちになりながら、自分自身を褒めまくります。 「逆に、俺以外を勇者として召喚していた場合にどうすれば世界を救えるかを考えた方が、正解に辿り着き易いかも知れないな」  となると案の定敵の目的が鍵か、とケイさんが小さく呟いています。 「とりあえず私は着替えるので、深く考え始める前に部屋から出てください、ケイさん。それとも、着替えを手伝ってくれますか?」  後半は妖艶な笑みを意識しながら言ってみたことですが、対するケイさんは鼻で笑って部屋を出て行きました。  ……納得いきません!  これでも絶世の美少女ですよ!  伊達に聖女扱いされてない容姿ですよ!?  蜂蜜を垂らしたような艶のある金髪とか、静謐な輝きを放つサファイアのような碧眼とか!  スタイルだって、モデル体型とまでは言いませんが、出るところは出て引っ込むところは引っ込んでるのに!  初めて会った男性だって、こちらが少し笑みを浮かべれば大抵の方が頬を赤く染めるのに!  意中の人物に効果が無かったら意味無いんですよバカアアアアアアア!
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