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「ご、ごめんなさいぃ……ッ!」
必死に謝罪してくるコイツ───フィーナ=オルテンシアは、この異世界トリヴァースにおける召喚師だ。
これでも稀代の天才召喚師であり、勇者召喚と言う神の奇跡にも等しい業を、「そこそこに疲れます」なんて馬鹿げた気軽さでほいほい行えるチートスペック持ち。
確実にこの世界の歴史に名を遺す、未来人にとっては偉人となる人物だ。
「で、今度は何が出てきた? どっかの馬鹿が解放した、太古の昔に封印された邪神か? ジヴァースから侵略の為にやってきた魔神か?」
手の中で軋んでいくフィーの頭蓋骨を無視して、俺は質問を優先した。
なお、先程上げた二つは過去の二回で俺が倒した実例である。
ちなみに俺の元の世界はここで、モノヴァースと呼ばれている。
モノ(1)・ジ(2)・トリ(3)という訳だ。
「そのどちらでも無いです! 無いと思います! そろそろ命の危険を感じるので助けてください!」
無いと思います、と来たか。
無駄に情報をぼかしたりはしないフィーの事だ、確定情報ではないのだろう。
となると、今回は前回までと違って敵の正体を調べるところから始める必要がある訳だ。
これ見よがしに溜息を吐いて、それからやっとフィーの頭部を解放してやる。
ついでに手を取って立たせた。
「あ、ありがとうございます」
まだ目尻に涙が溜まっているが、それでも礼を言えるところは素直に評価しよう。
「それから、お久しぶりです、ケイさん」
不意打ちの、満面の笑顔。
「ああ、久しぶり、フィー」
それですっかり毒気を抜かれてしまった俺は、不覚にも笑顔でそう応えてしまったと思う。
ひとまずじっくり話をする必要があるという事で、神殿を後にした俺達。
神殿の外に出ると、大勢の人が居た。
街から少々距離を置くこの場所は普段、全くと言って良い程に人通りが無い筈だ。
少なくとも俺の記憶に因れば。
けれど同じくその記憶に因れば、俺が───勇者が召喚されたその時に限って言えば、今と同じく大勢の人が殺到していた。
人数にして二十万は数えるだろうか。
街の総人口の半数近くが来ている筈だ。
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