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「さようでございます。その者の話によると、マタギ衆は足の部分にも毛皮を履き寒さを凌ぐこともあると聞きました」
「もしや、その者に頼んで足のほうも取り寄せたとか申すか」
「さすが殿、鋭いですな。いまや、床に就くときは足にも毛皮を履いております」
吉宗は思わず全身熊の毛皮で覆われた爺の姿を想像した。そして次の瞬間小さく失笑した。そんな様子を見た爺が尋ねる。
「いかがされましたか・・・?」
「いや、何も・・・」
すると、そこへ仕えの者が爺に知らせを持ってきた。
「何、届いたか。それはそれはたいそう楽しみにしておったわい。では早速、部屋に支度をするがよい」
吉宗は爺の様子を黙って見ていた。仕えの者がその場を後にすると爺が吉宗に今しがたの話をした。
「実はその松前出身の者に頼んで松前の名産物を取り寄せてもらいましてな。なんでも、その者が言うには海の幸はもちろんのこと、実家で作っているという松前漬がちょっとした自慢らしく、ぜひともと言うことなので届けさせたのです。まずこの私がこの身を持って毒味をし良き品であれば殿に献上しようと思いましてな」
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