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「一月程前の江戸からの知らせ、俄かに信じがたい話でしたが東の方から感じるこの邪気は・・・どうやらあの知らせは本当のようですね」
「ああ、それもどんどん強大になっている」
「そう言えば、吉朝殿が少しの間隙を貰うといい残して姿を眩ましたとか・・・」
豊明はその問いかけに答えることなく黙って夜空を見つめている。龍泉は人一倍、感が鋭く豊明の僅かな気配の変化をも見逃さなかった。龍泉は吉朝が姿を眩ます直前に出家したことと言うことを知っており、その一件について四神聖の中でも随一の策士である豊明が絡んでいると考えたのだ。聡明な龍泉に豊明が少し間を置いて答える。
「吉朝は、人に仕えるのを嫌う性格で朝廷に仕えるのも拒んでいた。だが、私の説得に応じ渋々ながら四神聖として仕えているところがあった。江戸からの使者が朝廷に窮状を伝えに来たが改暦の権限を巡って争っている今、近上帝が首を縦に振ることはなかった。やむを得ないことではあるがな。だがもしあの知らせが本当であるとすれば・・・」
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