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どうして分かったの!?
もしかして、どこかで一緒にいる所を見られていたとか……まさかっ、コンビニで!?
心を覗き込む様な彼の瞳。怖くて視線を外せない。
首筋に当てられた先生の手が、更に私の恐怖心を煽る。
「…脈拍数、80…90…100…凄いな、この頻拍発作はベータブロッカーを投与するべきか」
数秒後、ポツリと彼が言葉を落とす。
「へ?…ベータ…なに…」
誰に言うようでもないその言葉を、緊張のあまり上手く聞き取れずに目を丸くする。
「ベータブロッカー。心臓の拍動を抑える薬。ほら、ここ。頸動脈。深津さんの名前を聞いてから、もの凄い速さで心拍が上がった。口は嘘をつけるが、体は嘘はつけない」
先生は、私の首に当てる人差し指と中指である部分をクッと押し、意味有り気な笑みを浮かべる。
深津さんの名前を聞いてから心拍が上がった!?
「酷いっ!最初から分かってたんじゃなくて、名前を出して反応を試したのね!」
「七瀬さんじゃないのは、麻弥の焦る反応で何と無く分かってた。深津さんだと確信は無かったが、俺の嘘発見器とそれによる麻弥の反応で確信に変わった」
そう言って、先生は愕然とする私の頬を撫でながらニヤリと笑った。
嘘発見器って…
なんて失態。
この話は、外にいる時に上手く誤魔化せたと思ってたのに…
「…煙草の匂い…自分じゃ分からなかった」
口をへの字に曲げて、腑抜けた声を漏らす。
「ああ、俺にも匂いは分からない。深津さん、煙草吸うんだな」
「はっ!?」
「それは最初のカマかけ。相手が男かどうか、麻弥の反応を見ようと思って」
先生は悪びれも無く、いや、それどころか飄々とした態度で口端を引き上げた。
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