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「…なぁ、あのBMで迎えに来た男って、安藤とどう言う関係?」
店内の客が途切れるこの瞬間を待っていたかのように、私の背後で煙草を陳列する深津さんがポツリと言った。
出来る事なら、避けて通りたいと願っていた話題。
やっぱ来たかっ、この質問…
話さざるを得ない状況になったとしても、深津さんなら大丈夫。秘密が外部に漏れる心配は無いんだから!
と、一応の覚悟をして来たものの…
「どんな関係かと訊かれましても…私のもう一つの副業の雇い主と言いますか…」
二の足を踏む私はレジの前で微苦笑を浮かべ、ゆっくりと振り返った。
「もう一つの副業?…って、家政婦をしてる家の御主人か?」
深津さんは空になった箱を潰し、それを他の空き箱の上に重ねると私に視線を向けた。
「うん…そう」
「何でその主人が、あんな時間に安藤を迎えに来るんだ?家政婦の仕事は平日だろ?」
「それは…そうなんだけど。もともと電車で帰るつもりだったんだけど…斯く斯く然々な事情で予想外な展開になりまして…ビックリです」
「だから、何だよ。その斯く斯く然々な事情って。俺は想定外の展開であんぐりだっ」
煮え切らない私を見つめ、眉間に深いしわを刻む深津さんは、
「あの車…思い出した。もしかして運転してた男は、先月ここに来て安藤にビールを渡した同じ病院の医者じゃないのか?」
そう言葉を続け、首を傾げた。
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