第13話 【初詣】

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「…2日の夕方には帰宅するつもりです」 「仕事は?3日から仕事始め?」 「いえ、仕事は4日からです。1日早く戻って来て、家でのんびりしようかと…」 「そうか…。じゃあ、のんびりは置いといて、一応は3日の予定は空いてるんだ」 問いを連ねる深津さんは、きょとんとする私をチラリと見て口端をクッと引き上げる。 「…はあ。まあ、一応は」 笑みを浮かべる長身の彼を上目使いで見て、私は何の気なしにコクンと頷いた。 「…3日、半日で良いから俺に付き合ってよ」 「はい?あの…付き合うって、どこに?」 「初詣行こうよ。そうだな…熱田神宮にでも。クリスマスは泣く泣く諦めたんだ。初詣くらい付き合ってくれても良いだろ?」 深津さんは拗ねたように言った後、目を細めて爽やかな笑顔を放った。 クリスマスを泣く泣く諦めただなんて、大袈裟な。 大体あれは、クリスマスを一人で過ごすであろう淋しい私に気を使って、お情けで誘ってくれたくせに~。 今度は、正月休みを帰省だけで終わらせる私を可哀想に思った? ―――ったく、そんなに私を気遣ってくれなくてもいいのに。どこまでもお人好しなんだから、深津さんは。 「…良いですよ。行きましょう、熱田神宮」 前回の誘いを失礼な形で断ってしまった事に、ずっと申し訳ないと言う思いを抱えていた私は、静かな呼吸と共に笑顔を返した。 「えっ!?マジで!?じゃあさ、初詣なんだし着物を着て来てよ!成人式みたいなやつ!」 深津さんは突然声のトーンを上げ、目を輝かせる。 「えーっ!着物なんてアパートに置いて無いし。自分じゃ着れないし。着付けお金掛るし。しかも、疲れるから絶対に嫌です」 「何だよ、その嫌々尽くしは!…あ、でもその後に食事するなら洋服のが良いのか。でも、見たいよな~和服も…。だけどな…食事でシミが付いたらまずいし…」 喉仏辺りを触りながら、首を傾げて何やらブツブツと独語を落とす深津さん。 …あっ、食事と言えば、 高瀬家に戻るのが4日の夕方からだから…買い物は咲菜ちゃんとアピタにでも一緒に行こうかな。 しばらく二人に会えないんだ…… 淋しいな………先生。 ガラスの向こう側に見える街灯の灯りを見つめ、私は人知れず小さなため息を落とした。
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