1

10/10
前へ
/33ページ
次へ
「なんで合掌してんの?」 笑窪がとても似合う笑顔。 「あーいや…これは…明日オーディションだからさ!」 「そっか!頑張れよ!」 出窓を挟んで喋れるのはもうこれで終わっちゃうのだろうか。 「齋藤くんってさ!桜の彼氏だったんだね…?」 私は彼に背を向けて話しかけた。 「あーうん。そだよ。あー小島に聞いたのか。」 「うん…いいね!あんな可愛い彼女!」 私はそういって笑顔で振り向いた。 すると彼は少し悲しそうな顔をした。 「齋藤くんじゃなくていーよ。和馬で。」 と言って笑った。 「それは桜だけ~」 「…俺さ、片想いなのかもしんねぇ。」 「え…??」 「なんか桜俺に好きって言ったことねーし、振るのはいつも桜で告るのはいつも俺。」 と言ってまた笑った。 「かっこ悪…」 頭をかく齋藤くん。 「かっこいいっしょ…」 「え…??」 あ、やべ。 つい本音が(笑) 「一筋でいられる齋藤くんはすごいかっこいいと思うけど!自信もちなよ!」 と言って私なりに励ました。 綺麗事を並べとってもはっきりと彼に悟った。 「…おう。なんかりこちゃんって…なんか素直でいいやつだな!」 「え?」 「なんか初対面で分かったよ。いいやつっていうのがにじみ出てる。」 「オーディション頑張れよ!」 と言って笑って、私の頭を野球の帽子でぽんぽんと軽く叩いた。 そして私に背を向けグランドへ消えてった。 ずるくないかな…。 女ってさ。 頭ぽんぽんなんてさ! 男子にやって欲しいこと ランキングで3本指にはいるとおもうんだけど! ずるい…。 忘れるなんて… できるわけないじゃん。
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加