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「5時三角公園…5時三角公園…」
私はそう繰り返しながら
ものすごい勢いで自転車を漕ぐ。
すでに時計は5時を回っていた。
部活が長引くだなんて。
神様は意地悪だ。
待ち合わせ場所に着いたが
誰もいない。
だよなぁ。
携帯を確認すると
葵から一件。
【りこ~先に花火見る場所取りするね。】
どっか行っちゃったんだ。
もー最悪。
「おい。なな??」
後ろから呼ばれる自分の名前。
「ねぇ。いつからななになったの?」
「いーじゃん。七島よりななのほうがかわいい。」
「顔が可愛いからオールおっけぇ。」
「いや。だまれよ。」
こんなやりとりをしながら、
花火の場所取り場へと向かう。
なかなかいい場所にあるという。
「あー!りこちゃん!」
ビニールシートから立ち上がり手を振る桜。
「ゆ…浴衣…。」
桜は薄ピンクの桜の花が散りばめられた可愛らしい浴衣を着ていた。
可愛すぎる…
普通に負けたよね。
桜は浴衣なのに
私はただ近所にあるゴミ捨てにいくみたいな短パンにパーカー。
和馬くんがいること忘れてはなかったんだけど…部活だよ。
部活が理由だよ。
「齋藤部活は?」
と泉が言う。
「今日は4時におわった。」
「そうか。」
コンのポロシャツに
白のズボンを履き、
首にはネックレスがついていた。
男の子は楽で羨ましい。
「りこちゃん、こっちすわんなよ。」
手招きする方へ私はのそのそと近づいた。
和馬くんと桜の間にちょこんと座る。
なんともまあ不吉な場所。
「屋台回ってきなよ!和馬!りことなんか買ってきて。」
「り。」
私は言われるがままにのそのそと和馬君についていく。
「部活終わんの遅かった?」
「そう…今日なぜか1時間くらい遅かった。」
「お疲れ。腹減ってるっしょ?何食う?」
「イカのゲソ焼き」
「なんとまあ難しいものいうねえ、探しに行こ。」
和馬くんはスッと私の手を握った。
「混んでるからはぐれんなよ。」
少し行ってから
和馬くんはふと気づき
手を離した。
「ごめん、いきなりやだったよな。」
「え、ううん、大丈夫だよ!」
「じゃありこちゃん先行って!俺後ろからボディーガードみたいにくっついてるからさ!」
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