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「残念なのですが…まだ春だから…ついてないよ。」 「そっか。」 なにこの人。 すごいかっこいいのに… コミニケーション能力低すぎ?? 中庭と繋がっているここの教室は、日当たりが良い。 中庭は野球部の自主練の場所となるらしい。 「いつもここで自主練してるよね。」 窓から上半身を乗り出し、 腕にアゴを乗せ、レッスンの場所にいる私に質問する。 「あ、うん。オーディションがあるんだ。」 「そうか…俺も選抜あるんだ。」 「だから練習してるの?」 「そゆこと。」 彼はスッとその場から離れ、 壁とキャッチボールを始めた。 そして今度は私が窓から身を乗り出した。 「キャッチボールなんて、何年してないことやら。」 とボソッとつぶやいた。 彼はこっちをチラッと見て、 「やる?」 と聞いてきた。 私は頷いた。 でもこっからじゃ、 遠回りして行かなきゃならなくなる。 「…よいしょっと。」 私は窓から足を出し、 外へと出ようとした。 足つかない… 足が短いのか? いや。そうではない。 「…くくく…。」 彼は私に背を向け、笑った。 「な、なに」 「いや、そんな女子いないっしょ。いくら遠いからって。」 「よっこらせっと。」 私は彼の話を無視して、 地面へと降りた。 彼は私にグローブを渡した。 「ほいっ。」 「ど、ども。」 私はグローブをはめた。 「いくよ~」 彼から優しいボールが投げられた。 …いや。私をなめてやがる。 私はそう思い思い切り彼に向かって投げた。 「おおおっ。女子なのか?ボールつえーな」 と言って彼は微笑んだ。 こんなに笑顔が似合う人がいるのだろうか。 「女子だよ!!」 私はボールがくるのを構えた。 「強く投げねーよ。」 と言ってまた笑った。 何故だかドキドキしている… 今日会ったばかりなのに これこそが一目惚れなのかな。 こんなに背が高くて好青年で。 自主練をする努力家。 こんな男子を女子が見逃すはずがない。 多分このトキメキは一瞬。 キャッチボールは30分ほど続き、 お互いに帰って行った。
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