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ケンはいつも工藤と言い合ってて、カイさんは生暖かくそれを見守り、俺も楽しく過ごしていた。
カイさんが卒業してからは、中学校では俺とケンと工藤の3人でつるんでいた。
あの頃はとても楽しくて、あぁ卒業したくねえな、って思ってた。ずっとこうやって、みんなで変わらず馬鹿やってたいなって。
人の心なんて、簡単に移り変わっていくものなのに。
「おはよ」
パチリと目を開けば、見知らぬ男子生徒が俺の寝ているベットに腰掛けていた。
いや、正確には1度だけ相見えたことがある。
「ひさしぶり、渡辺クン」
「……芹澤さん?」
ニッコリ。
そう聞こえそうなほど整った笑みを浮かべていたのは、噂の人、芹澤さんであった。
「調子はどう?」
「……まだ少し疲れてますけど、問題ないです」
「そっかー」
はは、と彼は微笑みながら俺の頭を撫でる。飄々とした雰囲気の彼は、どこか読めない。
「あの……何か用が…?」
「ああ、ずっと君と話がしてみたかったんだよね。用という用はないかな。ただ、君ってどんなひとなのかなって興味があるんだ」
「はあ……」
やべーな怪しい匂いしかしないんだぜ。
こういうタイプの人間は扱いが難しい。下手なこと言うと何しでかすかわかったもんじゃない。俺はそっと彼を綾瀬川先輩カテゴリーに分類した。
「俺、人間観察が趣味なんだけど」
「へ、へえ」
「?」
突然始まった話に着いていけず、若干引いてる俺に首を傾げる芹澤さん。俺は気にせずどうぞどうぞと先を促す。
「前から君たちの話は兄さんから聞いてたんだ。面白いのが入ってきたって」
どうやら寮長のせいでフラグが立ったらしい。許せねえ。
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