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香坂のやつものすごい勢いで走るから、もう俺は気が気じゃない。
「いいか、香坂、階段は慎重にな!いいか!!?」
「イエッサー!!!」
……頭が痛い。
まーたこいつの取り巻きに文句言われちまうじゃないか。めんどくさい。
そして自分より背の低いやつにこうして軽々持ち上げられるのも、なかなかこたえるぞ。こいつチビゴリラなのか?
「着いた!」
「よしわかった直ぐにおろせ。おい!おろせって!!」
おろせと言っているのに、香坂はそのまま保健室に入るとベッドに勢い良く俺をおろした。
「……おい、もっと優しくおろせ優しく」
「ごめんなさい……」
しゅんとしてもダメだぞ!
保健室の独特の匂いが鼻をくすぐる。
入った時からわかってはいたが、保険医はいないようだ。
できれば成績のことも考えて、授業はサボりたくないんだが。でも確かにここ最近調子が悪いので、たまには保健室でゴロゴロしようかね。
「わたなべ、大丈夫かっ?」
「大丈夫大丈夫。たぶんちょっと疲れてるだけだから」
「……なんかな、わたなべ、おれ変なこと言ってるかもしれないんだけどな、」
「あ?おお」
「わたなべ、心が疲れてるみたいだ」
「……んん??」
心が、疲れている。
俺そんな漫画みたいな言葉、初めて聞いたぜ。
しかし、俺が思わず吹き出してしまいそうになったのとは裏腹によくわからない顔をしている香坂を見て、再度耳を傾ける。
「おれ、語彙力ないから、」
語彙力って言葉知ってたのか。こいつも一応秀才クラスだったわ。いや今はそんなことどうでもいい。
「なんて言ったらいいかわかんねえけどっ、わたなべ、なんか疲れてるとおもうんだ……なんでかはぜんぜんわかんないけど、心がきゅうって、なってるんだ」
「……うん」
「だから、その、なんていうか……今は寝ろっ!!!!!寝たら元気になるぞ!!!!」
最後投げやりだなァ。
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