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その日の夜、俺は久しぶりにケンに電話をした。
『あっちゃん!!!!!!!』
「うるさい」
相変わらずのデカイ声に、香坂を思い出す。
もしかしたら俺が香坂に世話焼いていたのは、こいつに似ているところがあったからかもしれない。
「なあケン、お前さ、俺のことどう思う?」
『かっこいい!あとな、俺より背が高ぇところもかっこいい!勉強もできるし、スポーツもそこそこだし、ケンカはおれの方が強えけど、そこはしょうがねえよな!』
「わかったもういい」
まだまだ続きそうだったので、やめさせる。まったく小っ恥ずかしい。
俺は自室のベッドから起き上がると、窓脇に立ち夜空を見上げた。
『あっちゃんはよ』
「ん?」
少し黙った俺に、ケンの方から話しかけてきた。
『昔っからモヤモヤしたもんが腹にたまってても、気づかねーんだよな』
「?どゆこと」
『だーかーらーー、なんつーのかなー!あっちゃんも気づいてないしー、周りの奴らも気づかなくってよー。あっでもおれはわかるけどな!!なんてったって、あっちゃんの大親友の幼なじみだからな!!』
「あー、ハイハイ、あんがとね」
『だからなあっちゃん、こうやって電話してくれるとな、おれ嬉しい。あっちゃんのことは俺が守ってやるからな!任せとせ!』
その言葉に、俺は思わず口を噤んだ。
そして、喉がククッと鳴る。
「くっ……な、なんだそりゃ……あははっ」
『アーーー??なーに笑ってんだよあっちゃん!!!!』
「くくっ……なーんでもないよ。あ、そういや工藤元気?あれから連絡してなかったからなー」
『ハーア???知るわけねえだろあんなハゲのことなんか!!』
「ハゲじゃねーから!だってアイツも受験だろ?どこ受けるとか言ってねーの?」
『知らねーってば!!そんなことより、次いつこっちに帰ってくんだよ!!!』
他愛のない話をしながら、夜は更けていった。
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