恋と教師とロールキャベツ

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「ねぇ、久我先生」 頼んでいる、数枚のプリントをホチキスでまとめる作業の手を止めずに、彼女はこちらへ声を向けた。 パチン、とホチキスの音。 「何だ?」 ペンを休め書類から視線を彼女へ。 自分がいる机の向かい、応接用のソファーに座り作業する彼女は、変わらずこちらを見ずにプリントをまとめていた。 相変わらず、真面目な事で。 口には出さないで微笑ましく姿を見守る。真面目だと言うと、何故か最近怒るのだ。 ……余計な事は言うまい。後になって困るのは自分だ。 「ポークソテーと野菜炒めとロールキャベツ……どれが好き?」 パチン、再びホチキスが紙を噛む。 逆にこちらの口はぽかんと開いた。 「は?急に何の話だよ」 「え……。ち、調理実習のメニューのハナシ……。今回、自由献立だから何作ろうかって友達と迷ってて……」 突然話を振った事に照れたのか、慌てて取り繕う彼女に笑ってしまう。  
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