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ドーシャスの頭に会敵する可能性が過る。敵は基地を占拠する事を目的とした場合、兵士が潜んでいるこの建物を無視する事は出来ない。となれば、建物を内部から制圧するか、外部から建物事破壊するかの二択になる。
(後者は有り得ん。後者なら爆発は一回で終わる筈がない。敵は必ず中に踏み込んでくる。……仕方ねぇ。)
ドーシャスは舌打ちをしながらも、自室へと戻る。爆発の影響で部屋は変形し、壁は崩れ、窓枠はひしゃげ、硝子が散乱する部屋の中にかろうじて生き残っている自動機銃がモーター音とけたたましい銃撃音を奏でていた。彼は入口付近に固めておいた装備を掴むと、ジャケットを羽織りヘルメットを被った。更に武器を背負うと、文字どおり部屋から飛び出した。
(タイムロス……か。)
ドーシャスは知っていた。このタイムロスが会敵の可能性を引き上げた事を。と、同時にヘルメットに内蔵されているヘッドセットからの通信が聴こえてきた。
『こちら第一小隊。敵は既に建物に侵入。本部建物1Fにて敵と戦闘中グワッ!』
ノイズだらけの通信だったが、漠是としている敵の位置と、少なくとも報告していた兵士が被弾した事は伝わった。この通信は無論、通信本部も聞いていた。
「こちら通信本部。敵は1Fに居る模様。建物内にいる動ける兵士は至急迎撃に当たれ。オーバー。」
ユウロベットは指示を出し終えると別の通信士の方を向く。
「建物外の様子はどうだ!?」
「既にそこら中で戦闘が開始されております!味方が不利な模様!」
通信士は断片的に聴こえてくる通信からの情報から味方が不利だと判断した。その判断は正しいものであったのだが、1つ誤りを挙げるとするならば、不利ではなく圧倒的不利であった事だろう。時刻は未明で兵士達は寝静まっていた時の奇襲であり、なにも考えずに屋外へ飛び出した者は即座に撃たれた。準備を整えた者は殆どが屋内での戦闘を余儀なくされており、屋外に出れた少数も数の戦力差を覆す術を持っていなかった。
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