筋金入りの射手達

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 彼等の装着するヘッドセットには時報のアナウンスが流れていた。そう、作戦開始を伝える時報である。 『カウントダウン……3、2、1』 ポーンと言う聞き慣れた電子音とトリガーに掛かる指に力が加えられるとのは同時だった。サイレンサーの装着された銃口からはその銃身に似合わない控え目な音を奏でながら高速で弾丸が発射された。闇の中を飛翔する弾丸は空を裂き一瞬の内にA国軍基地の見張りの兵士の頭を吹き飛ばした。その光景は凄まじい物であることは想像に難しくないだろう。何故ならば、見張りの兵士達の頭が同時多発的に吹き飛んだのだから。  見張りを消した同盟軍は前線基地を包囲(最初からしていたのだが、闇に紛れ安くする為に点在していた戦力を集結させたのだ)し、音もなくあっさりと基地内への侵入を成功させた。  この状況にいち早く気が付いたのが重装歩兵のスパカリ・ドーシャスである。念のためにと装備を整え、自室にて警戒しながら待機していた彼は見張りに対する狙撃こそ気付かなかったものの、基地内に侵入してくる連合軍の姿を目視にて確認できた。幸か不幸か、彼の自室の窓が丁度、侵入口を向いていた事が原因である。 「あぁん!? 見張りの連中はなぁにやっとるんだ!」 既にこの世の者ではなくなった見張り達に毒づきながら、彼は部屋に準備していた設置型の自動機銃の銃口を窓から出し、銃弾を発射させた。狙いをロクにつけている訳ではないので命中する筈もない。しかし、奇襲を仕掛けている事が気付かれていると思わせ、衝撃と動揺を与える事は出来た。ドーシャスの狙いをはすこしでも敵が混乱してくれている間に寝ている兵士を叩き起こし、反撃の準備を行う事だった。彼は自動機銃をフルオートに設定すると、モーター音と独特の連続した銃声を耳にしながら部屋を飛び出した。 (まずは……指揮官か)
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