筋金入りの射手達

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 ドーシャスの頭に浮かんだのポロリモンド中佐である。ドーシャス自身はポロリモンド中佐の事をあまり良くは思っていなかったが、基地の司令官である事は変わりはなく、またその事実を彼は認めていた。更にポロリモンド中佐は司令官という立場につけるだけの指揮能力を有していた。ドーシャス個人がどう思っているにしろ、ポロリモンド中佐は必要な人間であるし、なにより基地司令官の『声』と言うのは絶大な効力を発揮する。だからこそ、ドーシャスはポロリモンド中佐の元へ向かおうと思ったのである。  ドーシャスが駆け出そうとしていた時、建物の外では彼の目論見通り混乱が起きていた。 「糞が!俺達の侵入は気付かれる筈がないだろ!」 「落ち着け!」 「これが落ち着いて居られるかぁ!反撃だ、反撃ィ!」 叫び声を上げながら一人の兵士が背中に背負っていたロケットランチャー、RPG-7を構えた。 「うぉぉぉぁ!!」 兵士がトリガーを引いた瞬間、爆発物の塊である弾頭が飛んでいく。しかし、冷静に狙いを定めていたのなら兎も角、ほぼ錯乱状態で発射したロケットは設置機銃が顔を覗かせている部屋には命中せず、そのワンフロア上で更に右にずれた部屋へと命中した。爆発が巻き起こり、部屋の窓ガラスが音を建てて飛散する。コンクリートが粉々に砕け、火の手が舞い上がる。 「オイオイ、初っぱなからブッ放して来るか普通……」  爆発の衝撃で建物が揺れ、転倒はしなかったものの壁に手を着き体を支えていたドーシャスは、揺れが収まると共に文句を垂れた。ロケット着弾による建物破壊はワンフロア下の階にも影響を及ぼしていた。瓦礫によって廊下が埋もれてしまったのである。目の前の光景がドーシャスにある事実を気付かせる事を遅らせるには充分だった。
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