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術を完成させると、その相手に望みはないと分かっていても千をと思ってしまう。
八雲にはそれが分かっていた、だから魔法陣の仕上げをしなかった。
千のことをずっと想っていたが身分違いなのでその気持ちを胸の奥にしまっていたのだ。
「本当に後悔しませんか?」
根負けした八雲が千に問い掛ける。
千は、にっこりと微笑むと涙を拭い頷いた。
「本当に、姫様には昔から驚かされてばかりです」
「うふふ、八雲の事は幼い頃より知ってますもの」
八雲は溜息を吐くと、隠し扉を開けた。
その通路の先に、異空間に飛ぶ魔法陣が見える。
八雲は、その魔法陣では無く違う魔法陣を書いた布を置く。
それは八雲独自の魔法陣で、八雲の秘密の研究室に繋がっていた。
異空間の狭間は、陰陽師が他人に術を盗まれずに研究出来る場所として使われている。
八雲は、秘密保持の為に個人の異空間の入り口は他人に知られないようしていた。
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