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布の魔法陣の上に八雲は立つと千を手招く。
「こちらです」
「この先に、八雲の研究室があるのですね」
八雲の手を持ち、千は興味深く魔法陣を見る。
貴族に魔力は無い。
魔力は高貴な者に相応しくない。
それが、貴族社会だ。
だが、貴族の争いに魔法は欠かせない。
それ故、貴族にはお抱えの陰陽師が居る。
陰陽師の身分は低いが、貴族の手足となり陰謀に加担する立場の為、どの貴族も陰陽師の育成には力を入れていた。
八雲が転移魔法陣を起動させる。
魔法陣の文字が光り光柱となり八雲と千を包み込む。
その光柱が消えると八雲と千は、異空間の中に居た。
「ここが八雲の秘密の場所なのですね」
千は興味深く辺りを見る。
そっと壁に触ると、慌てて手を離す。
「この壁は、なんだか柔らかいですわ」
「ええ、薄い膜で空間を包んであるだけなので強い力を加えないでください。異空間の間で迷子になると戻れなくなります」
八雲の言葉に千は頷き、壁から離れ八雲に近寄る。
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