始まりの冬

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そのまま、八雲は術の詠唱に入る。 千は、黙ってその術を見守る。 魔法陣の文字が浮かび上がり踊るように二人の周りをグルグルと回り出す。 文字の乱舞に千が魅入っていると、急に眠気が襲った。 ふらつく千を八雲が支えると、術の詠唱も佳境になり益々文字の乱舞に拍車がかかる。 魔力に耐性の無い千には、かなりの負荷になる。 その為、八雲は千を眠らせたのだ。 千を支える八雲の腕に力が入る。 術の詠唱が終わると、魔法陣の文字が八雲と、千の身体の中を通り抜けゆっくりと消えた。 「っ…」 魔力と体力をかなり消耗しふらつく。 八雲はその場に膝から崩れたが、意識の無い千を抱き締め傷つける事はしなかった。 術で眠る千の頬を八雲はそっと触ると 「姫様、術は無事に終わりました」 そう呟くと愛おしそうに千を見た。 その後、八雲は眠ったままの千を見つからないよう式神を使い自室に戻すと、行方をくらませた。
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