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二人だけの秘密の儀式の後、千の結婚が決まった。
親の決めた貴族同士の結婚。
千は、我慢して相手と契った。
後朝の文を手に、千は八雲を思いそっと泣いた。
三日夜餅を、食べ露顕の間も千は感情を殺し扇で顔を隠し喜ぶ親や親類を見ていた。
しかし千は、祝宴が、終わると行方が分からない八雲の事を考えて泣いた。
「いつの日か、また会えますよね。八雲…」
千の手の上の紙を見て呟く。
それは、あの日八雲の式神が千を屋敷に戻した時に残された物だった。
千は、八雲との来世を信じその紙を大切に文箱にしまった。
そんな千の姿を、八雲はじっと見守っていた。
術を完成させる為、八雲は千の前から姿を消し式を使い千を見ていた。
「まだ、不完全なこの術を今は完成出来なくても。幾度転生しようとも完成させます」
季節は冬を終え春になり、夏や秋が去り、また冬を迎え二人にあの日を思い出させる。
「…八雲」
「姫様」
来世をともに…。
二人の思いは同じ。
現世で叶わぬ思いを来世で。
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