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その千の視線から必死の思いで八雲は目を逸らし何事も無かった様に話した。
「さぁ、姫様。そろそろお部屋へお戻り下さい」
「八雲。わたくしは」
「姫様。成功するか分からないのです」
八雲が落ち着いた声で言い聞かせる。
「八雲。わたくしは自分の好きでもない方と結婚させられます。でもそれは貴族の娘としての義務です。今まで逃げてきましたが、もう無理です。
ですからわたくしは、八雲の実験相手に名乗りを上げたのです」
千は必死で八雲に話す。
これが最後の機会だと分かっていた。
結婚が決まれば、こんな風にお忍びで部屋を出る事は出来なくなる。
千が、結婚しなかったのは幼い頃より八雲に想いを寄せていたからだ。
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