始まりの冬

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しかし、八雲はその迷いを強い意志で押し留め千に穏やかに話した。 「まだ成功するとは限りません。この輪廻転生術式を掛けられた二人の魂は、転生の度に惹かれ合い離れられなくなるのですよ」 「わたくしは八雲が好きですわ」 「姫様、そのような事を大っぴらに言ってはいけません」 八雲は慌てて部屋の外に誰かいないか確かめる。 誰もいないのを確認して、八雲はホッとため息を吐く。 「資料置場の此処には、普段から滅多に人など来ないではありませんか。八雲は気にし過ぎです」 「ですが、用心に越したことはありません。この様な場所に姫様が来る事が間違ってるのです」 八雲は、用心の為に衝立を戸口に立て掛けた。 「わたくしは八雲に会いたくて、会いたくて…」 千の目から大粒の涙が零れ落ちる。
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