始まりの冬

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そんな千に八雲は狼狽え 「姫様、泣き止んでください」 と、涙を拭く布を探す。 しかし、普段から手拭など持っていないので仕方なく困り果てていると千が泣きながら言う。 「八雲がわたくしを術の相手と決めたら泣き止みます」 「姫様、困らせないでください」 「いやいや、わたくしは八雲と来世を生きたいのです」 潤んだ瞳から大粒の涙が零れ落ちる。 「姫様。遊びじゃないのですよ」 「分かってますわ」 「本当に、姫様は昔から一度決めたら考え方を改めない頑固な所は変わりませんね」 八雲は、頑として頭を振らない千に降参して呟く。 「わたくし、術の完成をずっと待ってましたのよ。なのに八雲ったらなかなか完成させないから」 ぷくっと頬を膨らませ千は話す。 その顔を見て八雲はまたため息を吐いた。
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