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5時限目、数Ⅰ。
早々に、佐藤は寝る準備をしている。
「おい、少しは聴こうって態度、出せよ」
「ナイトメアが俺を呼んでいるぅ~」
「なんだよ、ナイトメアって。中二臭いぞ」
そういって、啓介と大樹は声をあげて笑う。
数学の井上先生が来る前に、担任の神津先生が入ってきた。
ホームルームにはまだ早いのに、いったいなんだ?
クラス中がざわついた。
「おーい、注目ー!転校生が来たぞー。5時間目から一緒に勉強するからな。七林君、挨拶して」
先生の後ろから、小さな少年が入ってきた。
背は160cmほど。大柄な神津先生から見るとまだ中学生にも見える。
色素の薄い髪、グレーの瞳、雪のように白い肌・・・・さっきの少女?
男子のブレザースーツを着ている。ハーフなんだろうか、彫りの深い美人だ。
「七林 琳(ななばやし りん)です」
発せられた言葉に外国語訛りはなく、きれいな日本語だった。
この姿かたちで、日本語を話されると違和感がある。
「おーい、佐藤。隣あいてるな。七林君、あそこに座って」
「はい」
声はか細く高い、少女のようだ。
「あの美人、お前の隣だって」
「美人って言ったって男じゃん。残念ながら」
「男だらけのむさい中にいたら、目の保養になるじゃねぇか」
「啓介は男でもいいんか?」
「まさかぁ~」
本当に、このときは冗談だった。
隣に静かに座った七林クンは、こちらをちらりと見て「よろしく」と小さく頭をさげた。
近くで見ると、余計肌が真っ白に見える。
女子をまじかで見たことがなかったから、女の子ってこんなものかなとも思う。
本当に女子でないのが惜しい。いっぺんに恋に落ちるだろうに。
佐藤も、ことあるごとに七林クンをちらちら見ていた。
まさに、地獄の中に天使が舞い降りたよう。
緑の草原に一輪の花が咲くように、常にその存在は目についた。
入学して以来4か月・・・・小さな楽しみが増えてきている。
それはクラス全員が感じていた。
そしてたった2週間・・・・だけど2週間で七林クンはクラス中のヤツを虜にした。
仲良し三人組・長谷川、佐藤、渋沢もその中に含まれる。
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