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店内は、赤い灯しが壁に掛けられ、やや広い部屋中を昼間のように照らしている。 目の前にはカウンターがあり、壁に沿ってテーブルが置かれている。
店内は結構な客入りで、十のうち八割の椅子は埋まっていた。
「夜間外出禁止令だ! 知らないとは言わせんぞ!」
「も、申し訳ございません! 時計が無かったもので!」
カウンターの中にいる、恰幅の良い店主が必死に頭を下げながら叫んだ。 確かに、見回すと壁時計の類いは無く、怯える客の中にも時計を持つ物はいないようだった。
「ふむ…… 仕方ない、今日のところは見逃してやる。 お前たち、さっさと家に帰れ!」
歩哨の二人は、店に背を向けて、開きっぱなしのドアを出た。
「撃て!」
店主が叫び声が聞こえた。 先に路上に出ていた歩哨が、短機関銃のグリップを握り直しながら、急いで振り返った。
凄まじい銃声が連続して起こり、相方の歩哨が後頭部を炸裂させて、前のめりに倒れた。 店主を始めとし、客たちのほぼ全員が、こいらに拳銃を向けていた。
「貴様らっ!」
叫び、短機関銃を店主に向けた。 が、その時にはもう、彼は天を仰いで、寒気の立ち込める石畳の坂を転げ落ちていた。
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