たまにはこんな話でも

眠れる街

「よし、合図を出せ。 決起の時はいまだ」
店主が指示を出しながら、45口径のピストルを構えて、ドアを出てきた。 二人の殺害を確認するためで、死体の脇腹に蹴りを入れ、それでも抵抗がないので、死んでいると確信した。
「信号弾さっさとしろ！ 奴らはすぐ集まってくるぞ！」
すぐに近くの治安部隊が来るだろう。 レジスタンスたちの気掛かりはそれだった。 酒場の屋上に数人の男たちが登っていた。 彼らは寒空の元、すっかり日の落ちたプラハの街を見つめていた。
「行くぞ……」
一人が、通常より少し短いピストルを天に構え、トリガーを引いた。 銃口から打ち上がったのは、赤い光を放つ信号弾である。
信号弾は澄んだ空を高く登り、数分間に渡って、空を照らした。 やがて、街中から、呼応する信号弾が打ち上がり始めた。
「行くぞ！ 武器を寄越せ！」
屋上から男たちは消え、別の意味で騒然としている、酒場に戻って行った。 店主が指揮し、酒場の奥から外国製の小銃や、短機関銃を運び出している。
「全員装備は整ったか？ 行くぞ！」
店主はパリで採用されている、長い歩兵小銃を掲げて、ドアを飛び出した。 レジスタンスの男たちは、歓声を上げて酒場を出撃した。