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「サルスベリっていうのよ。漢字で書くと百日紅、字の通り、紅色の花が長く楽しめるって意味らしいわ」
「サンゴちゃんと付き合うようになって、草花に詳しくなった。何気なく咲いてる花にも季節を感じられるようになったし、サンゴちゃんのおかげで僕の見る世界が広がった気がするんだ」
そういってはにかむように笑う竜ちゃんはとてもチャーミングだった。思わず抱きしめたくなる位。
「やめてよ、何?急に改まって」
照れ隠しにそう言うと、竜ちゃんはくすりと笑った。
「このサルスベリが並ぶ通りをサンゴちゃんと歩いていると、すごく幸せな気持ちになるんだよ。それがすごく嬉しくて、サンゴちゃんも僕と同じ気持ちだったら嬉しいなって」
嬉しかった。私がこの道をこっそり竜ちゃんの家へと続く幸せの道と呼んでいたこと、竜ちゃんも同じ気持ちでいてくれたことが。
「今日の夕ごはんは何にしようか?」
「・・・冷やし中華がいいな。サンゴちゃんの特製ダレで」
「了解」
私はそう言って、竜ちゃんの手を握った。握った手に竜ちゃんはきちんと答えてくれる。
大切の人との幸せな時間を、思いがけない小さな友達を運んでくれた幸せの道に、長い影を落として、私たちは竜ちゃんの家へ向かった。
pink heart * FIN
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