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「こんにちは、今日も暑いわねぇ」
1週間後、今日もいつもより早い時間に家を出て、団地の中の公園にやって来た。
ベンチにすました顔で座る少年に声を掛け、隣に腰を掛ける。
会う度に私たちの距離は近づいていく。少年は横目は私を確認するとにやりと笑った。
「お母さんへの交渉は上手くいったみたいね」
私もにやりと笑ってみせる。少年はぽんと花壇の縁に立ち上がって、スカートの裾の両端を摘んでお辞儀をした。
「どう?」
バラの花が散りばめられたピーチピンクのひらひらしたワンピースのウェストにはチェリーピンクのサテン地のリボンが結んである。
同じくチェリーピンクの綿のカーディガンを羽織っている。足元にはピーチピンクのパンプス、ドットのリボンが付いている。
花壇の淵を飛び跳ねながらそう訊ねる少年に、
「すごくかわいいわ」と答えると、「でしょう?」とポーズを取る。ニチニチソウの花壇の前に妖精が舞い降りたみたいだ。
今日の服装は少年の体型にぴったりで、とても似合っていた。
「お母さん、君の個性を理解してくれたんだ?」
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