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三人の後を追うと、すでに洞窟の中に入ることは決定しているようだった。人が入れそうな大きさがあるのがわかった時点でこうなることは予想ができていたが、それでも微妙な気分になる。
入口の近くこそ光が届いているが、それ以外は暗闇に包まれていて、スマートフォンの明り程度ではまったく奥まで照らせない。
「おっしゃあ、俺が先頭で、その次が西園、岸谷と続いて……森田は最後でいいか?」
「構わないよ」
岸谷も西園さんも異論はないようで、そのまま洞窟の中に足を踏み入れていく。空を見ると太陽はまだまだ高い。
「おい、早く来いよ」
「ああ、ごめん」
洞窟の中はごつごつとした岩をくりぬいたような質感で、底には多少の砂が積もっている。砂浜が近いにしては砂が少ない気もするが、潮の満ち引きで流されているのかもしれない。
湿気が多く機械を放置したらさびてしまいそうだ。気温も体感で十度以上の差があって、パーカーを羽織っている西園さん以外は少しだけ震えているだろう。いや、彼女も脚が出ているし水につかってもいる。
「寒いし長居はしないほうがいいと思う」
「まあいけるとこまでいってみようぜ。なあ西園」
「そうだね」
西園さんはやけに積極的だ。それでも寒いとは感じているのか、パーカーのジッパーを閉じる音が聞こえた。
岸谷が反論しないかと期待してみたが、なにやら独り言をつぶやいていてだめそうだ。耳を澄ませてみたが、彼が何を言っているのかはうまく聞き取れなかった。
じゃぶじゃぶと水を切る音を響かせながら、暗い洞窟の中をスマートフォンの光源を頼りに進んでいく。
天井から水がしたたり落ちる度に西沢さんが叫び声をあげ、その度に新井が声をかけるということが続いた。こうしてみると二人はいかにも恋人同士に見える。しかし、西園さんは誰とも付き合っていないといっていた。いったい何が本当のことなんだろうか。
そんな風に考えていると、ふと西沢さんの艶めかしい足が見えた。すらりとしていて手入れも行き届いているであろうということが分かる。淡い光に照らされて、海水で濡れたふくらはぎが美しい。岸谷がいなければそこから先、つまりは太ももがみえそうなものだ。
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