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「世界が終わるなんて誰が言った」
隣の彼は眼下に広がる街並みを、景色そのものを、取り込むように呼吸した。
彼の言う“世界が終わる”というのは、きっと、2012年のマヤ文明の人類滅亡説をさしているのだと思った。
廃工場と隣り合う様に建っているこれまた廃れた七階建てのマンションの屋上に、私たちはよく足を運んだ。
そこは、知る人ぞ知る中々の絶景のポイントではあるが、地元では"幽霊マンション"と噂されているため、めったに人は近寄らない。
私も彼も、お互いに“よく鉢合わせる人”でしかないが、普通であれば高校の学舎で就学している時間にここにいるので、何か同じように事情でもあるのだろう。
彼が私に話しかけたのかは不明だが、
「でも誰かが言い出したから、皆もそれに習ったんだと思う」
そう言っておいた。
私は彼から眼下の街に目を移し、再び彼を見る。
彼の名前を私は知らない。
聞くことをしないからなのかもしれないが。
彼はふふふと笑った。
「それが本当なら、つまらない世界だな」
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