命語り

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先つ日もおかしな夢を見た。 髭勝ちな五十代半ばの男が、歩に助けを求めてくるのだ。 極めて濃い闇色の水にその半身を呑まれながらも、懸命に伸ばすその腕を、歩は掴んでやることが出来なかった。 そうして朝日が顔を照らす頃、ゆっくり瞳を開け、後悔の念に駆られるのだった。 このおかしな夢は、ここ三ヶ月のうちに度々見ているので、さすがに気味も悪くなった。
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