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それでも、楽しく会話をして笑い合うことはあってもこんなにもまっすぐな「ありがとう」は聞いたことがないかもしれない。
一切の邪気のない笑顔。それは、老婦にとってとても新鮮で、かつ懐かしいものだった。
何故こんな老婆に、という疑問は晴れないままではあるが、自身の荷物を持って「行きましょう!」と笑いかける汰一が悪事を働くとは到底思えなかった。
息子や孫に話せば見知らぬ人間を簡単に信用するなとひどく叱られるかもしれない。けれど、老婦の心には確かな想いが芽生えていた。
「この少年は決して自分を傷付けたりはしない」と。絶対の確信があった。
理由などは未だわからないままだったが、その確信さえあればもう何を疑う必要もない。老婦は汰一に頬笑みを返してその数歩後ろを追いかけた。
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