第一章 【迷夢】

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 痛みにごろごろ転げ回る汰一には構いもせず、マイクを握った彰は唸るように吠えた。 「俺はッ! 女の子がッ! 大好きなんですぅぅ~!!」と。  隣近所から苦情を貰いかねないその大声でも、ここは防音完備の部屋。語尾がエコーとして残り、汰一の耳を刺激するだけで済んだ。  キーン……という耳触りな音とともに、脳が揺れている。彰の声は必要以上に通るから、余計に酷い。  うるさい、と非難すればじとりと睨まれ汰一は大きな身体を縮こまらせた。 「わかるかね、君に。男に嫉妬心を抱くという屈辱が」 「イエ、わかりません」 「ですよねー!! 俺だってびっくりしてるもんねー!!」  半ばなげやりに言う彰を無視し、汰一は手元にある液晶型のリモコンをもくもくといじる。  苛立ちを募らせた彰を落ち着かせるには、この手段が一番的確で、そして楽だ。  ピピピ、と電子音が響いて目の前のテレビの画面が切り替わる。 .
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