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痛みにごろごろ転げ回る汰一には構いもせず、マイクを握った彰は唸るように吠えた。
「俺はッ! 女の子がッ! 大好きなんですぅぅ~!!」と。
隣近所から苦情を貰いかねないその大声でも、ここは防音完備の部屋。語尾がエコーとして残り、汰一の耳を刺激するだけで済んだ。
キーン……という耳触りな音とともに、脳が揺れている。彰の声は必要以上に通るから、余計に酷い。
うるさい、と非難すればじとりと睨まれ汰一は大きな身体を縮こまらせた。
「わかるかね、君に。男に嫉妬心を抱くという屈辱が」
「イエ、わかりません」
「ですよねー!! 俺だってびっくりしてるもんねー!!」
半ばなげやりに言う彰を無視し、汰一は手元にある液晶型のリモコンをもくもくといじる。
苛立ちを募らせた彰を落ち着かせるには、この手段が一番的確で、そして楽だ。
ピピピ、と電子音が響いて目の前のテレビの画面が切り替わる。
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